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2012-02-15 (水) | Edit |

 3番目はフェンリス。シナリオライターはDAシリーズのリードライターでもある(有名な)デヴィット・ゲイダーさん。以前紹介したビデオ短編の元ネタでもあります。

 ゲイダーさんが書いたキャラクターは(DA Wikiによれば)、
DA:Oのゼブラン、アリスター、ケイラン、モリガン、シェイル
Awakeningのアンダース(DA2は別の人)とナサニエル、ジャスティス
そしてDA2のフェンリス、カッサンドラ、オシノ、メレディス。

 オシノもこの人だったのか(笑)。書きすぎ!

フェンリス

 またハンターが彼を追っていた。

 本当のところ、数日前からその事には気づいていた。宿屋の主人の、あの太った男がやましげに目を逸らし、彼と目を合わせるのを避ける様子からもその事は判っただろう。部屋の片隅に立つ売春婦が、哀れむように彼を見て、そして笑みでそれを覆い隠す様子からも判って居たはずだった。彼が食事を取るために立ち寄ったそのむさ苦しい酒場の常連客が、彼が入ってきた時に静まりかえった様子は、普通のヒューマンの住民達が、奇妙な紋様に覆われた皮膚と巨大な剣を持った奇妙なエルフと対面した時に見せるきまりの悪い静けさとは違っていた‐それはむしろ、今まさに扉から揉め事が入ってきた事を知っている者が、それが存在しないかのように最善を尽くして振る舞う時の静けさであった。フェンリスはその二つの違いを良く知っていた。

 彼は怠惰になっていた。既に判っているはずの真実に背を向け、彼は心の一部で、未だにその事を認めることを拒んでいた。彼自身が間違っていた事を、結局は単なる逃亡者の偏執症に過ぎなかったという望みを抱いていた。最後に訪れた3つの街で、彼の滞在は次第に長くなり、彼の目立ちすぎる紋様を隠そうとする努力すら、最後にはほとんど見られなくなっていた。彼は自分自身にこれは挑戦だと言い聞かせていた。奴等が来るなら、来させるが良い。その勇気があるなら、彼を連れ戻そうと挑めば良い。心の奥底では、しかしながら、彼が単純に逃亡に飽き始めたのでは無いかと疑ってもいた。

 今こそ行動の時だった。その宿屋の部屋から僅かばかりの所持品を片付け、彼は窓から飛び出した。裏側は暗い路地に面していて、速やかな降下を容易にする充分な出っ張りが続いていた。宿屋の主人が心配げに見つめる中、充分な調査の後でこの部屋を選んだのはまさにこのためだった。あの太った男が好奇心から、あるいは部屋代の支払いが無い事に気づいて、部屋を訪れフェンリスが姿を消した事に気づくまで、どれくらい掛かるだろうかと気になったりさえした。 一週間、いや、彼のことを売ったのが主人だとすればもっと早くか。

 その路地には、何匹かのはぐれネズミと、ゴミの山に寄りかかっていぎたなく寝転けるエルフの浮浪者以外には何も居なかった。フェンリスは立ち止まると、その男を忌々しく見つめた。彼は帝国から逃げ出しさえすれば、周囲に紛れられると考えていたのだった。エルフ達が自由に暮らす土地で、もう一人エルフが増えたところで誰が気づくだろうか?もちろん、かれは大馬鹿者だった。これほど多くの彼の同族が、脅えた家畜のように生きて彼らの自由を浪費している事など、彼には知る由も無かった。彼にとっての選択肢が、地元のヒューマンがエルフに期待する従順な風体を身に付けるか、あるいはヒューマンの王国が投げ与えるゴミ屑を泥の中から探し回りながら彷徨く氏族の中に逃げ込むか、それとも戦うかしかないとすれば……ならば彼の選択は一つしか無かった。

 フェンリスが背中からその大剣を引き抜くと、浮浪者は蠢いて目を覚ました。そのエルフは突然の恐怖に金切り声を上げたが、フェンリスは無視した。他の連中がやって来ている、路地の陰に隠れて‐少なくとも両側に二人ずつ‐頭上に一人か?彼は耳を澄まし、頭上で陶器のタイルが擦れ合う微かな音を聞いた。間違いない、クロスボウ使いだ。彼を釘付けにしたと思っている事だろう。

 フェンリスは路地の端の、大通りの反対に向かう方へと走り始めた。そこは曲がりくねった中庭と、下水道とつり下がった洗濯物の列からなる迷路に続いている……同時にそこはずっと暗く、街の衛兵に気づかれる事無く逃げる事を容易にしていた。なぜ追跡者達が衛兵に賄賂を渡して、追跡を手助けさせないのかは彼の知る所では無かった。いずれにせよ、別の街で彼は衛兵達とまずい事になり、追跡者達の邪魔をしてくれたのと同じくらい彼の逃亡の邪魔ともなった。あえて危険を冒す価値は無かった。

 浮浪者は恐怖に叫び声を上げ、よたよたと立ち上がったが、フェンリスは既に彼のそばを通り過ぎていた。二つの長く伸びた影が接近して来ており、ほとんど姿は見えなかったが、彼らの獲物が追跡に気づいたことを知って動きを速めていた。フェンリスは栗色の姿を垣間見た。テヴィンターの兵士か、すると。ならば良い、事は簡単だ。傭兵であったとしても易々と殺せるだろうが、こいつらのような帝国の犬を斬り倒す方が愉快だった。

 彼の剣が描く幅広の軌道は、最初の追跡者の剣を受け流すと同時に横にはじき飛ばした。二人目がその隙に乗じようと突進して来て‐フェンリスの拳を受ける羽目になった。彼の紋様は今や明るく輝き、その中のリリウムが彼の肉体を通じて魔法を拳へと送り込むと、フェンリスの拳は位相を飛び越え、ヘルメットをすり抜けて直に追跡者の頭の中へ到達した。彼は突然立ち止まり、恐怖に硬直した。

 すると警告を受けていなかったわけか。馬鹿な連中だ。

 リリウムの紋様が再び輝き、フェンリスは彼の拳の一部を実体化させた。追跡者は仰け反って、彼の口と耳からは血が噴き出した。その時、最初の追跡者が体勢を立て直して彼の剣を振り下ろした。フェンリスは二人目の頭を軸にして巧みに回転させ、その身体を一人目の剣が描く軌道の先に置いた。剣は深々と男の肩に突き刺さり、フェンリスの一蹴りで二人の身体は共に煉瓦の壁へと叩きつけられた。彼の拳は暗い血の赤に染まっていた。

 彼は連中に止めを刺そうとしたが、他の追跡者達は既に何事が起きたか察知した様だった。クロスボウの矢が一本、フェンリスの頭の側、片耳を僅かに掠め去り、さらに多くの兵士が走り寄る軍靴の音を聞いた。彼は路地に走り込み、同僚の死体を押しのけて立ち上がろうとする追跡者を飛び越えて、迷路へと急いだ。いくつもの暗い出入り口の前を彼は駆け抜けた。洗濯物の縄を切り落とし、樽の上に投げ掛けて後ろから来る追っ手の障害物とした。連中が追いかけてきているのは間違いなかった‐彼には連中がテヴィンター語でののしる声や、クロスボウ使いが良い位置に付こうと頭上で這い進む音も聞こえた。

 最初に目にした開いたままの雨戸からフェンリスは飛び込んだ。彼は焼きたてのパンの香りが充満する台所へと降り立ち、フェンリスが立ち上がろうとするやいなやヒューマンの女性が悲鳴を上げた。皮膚に密着する鎧を身に付けた、ほとんど彼の身長と同じ長さの大剣を担いだエルフの姿というのは、歓迎すべき光景で無いことは疑う余地も無かった。彼は立ち上がり、胸元を本来想定していたより遙かに大きくはだけてしまったナイトガウンを纏った驚くほど魅力的な女性が、壁に身を張り付かせている姿に気が付いた。

 フェンリスがにやりと笑いかけると、女はまた悲鳴を上げた。彼は焼きたてのパンを一つ掴み取ると、そのあばら屋の正面扉へ急いだ。既に兵士達が窓からよじ登って来て、さっきの女性はもう一度悲鳴を上げると気を失って倒れ込んだ。他の連中も正面に回ってくるだろう、その前に脱出しないと……

…そこで彼は凍り付いたように止まった。出入り口に立つ男の事は知っていた。栗色の外套に、僅かにその冷酷な目を覆う漆黒の髪。彼の首の傷跡は言うまでも無く、フェンリスが付けた物だ。くそったれの治療薬と忌まわしい魔法め。なぜ誰も彼も死んだままで居ようとしないのか。

「アヴァナ、フェンリス。また会えて嬉しいよ。」その追跡者の声が冷たく囁き、クロスボウを持ち上げてフェンリスの胸元に狙いを付けた。すると、屋根の上に居た一人か。利口なやつだ。

「前回の結果を考えれば、お前が再び挑戦しようするのは驚くに値するな。」

「もはや銭金の問題じゃ無いんだよ、奴隷野郎。」

 ああ、連中がその言葉を口にする時を、フェンリスがどれ程愛していることか。

「頭と胴体がおさらばすることになっても構わないと?」

「こちらが先手を取っている間は、それは無い。油断したのがまずかったな。諦めろ。」
他の追跡者達もようやく窓をくぐり抜けたようで、更に他の者が街頭で叫ぶ声も聞こえた。選択肢は二つしか無いように思えた‐諦めて、後の機会に望みを繋ぐか…それともここで運に任せて戦うか。

 本当の所は選択などでは無かった。彼は剣の柄を強く握りしめると、追跡者に向かいゆっくりと、猛々しい笑みを浮かべた。「ヴィシャンテ カッファ」彼はシュッと息を吐き出し、そして攻撃を仕掛けた。


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テーマ:ゲームプレイ日記
ジャンル:ゲーム
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